相続・事業承継コンサルタントの小島淳一です。
あなたの想いを実現するために、
相続と事業承継を両輪で支えます。
経営者の高齢化が進むなか、「事業承継」は一部の企業だけの課題ではなく、多くの中小企業にとって避けて通れない経営テーマになっています。
事業承継は、単に会社を“引き継ぐ”ことではなく、経営・資産・想い・取引先との関係を次世代へつなぐことです。「後継者がいない」「税金が心配」「M&Aはハードルが高そう」と感じ、着手できていないケースも少なくありません。
しかし近年は、税制優遇や補助金、公的支援制度も整っており、以前より取り組みやすい環境が整っています。
■事業承継とは?
事業承継とは、会社の経営権や株式、事業用資産、技術、信用などを後継者へ引き継ぐことを指します。
特に中小企業では、経営者個人にノウハウや取引関係が集中していることも多く、準備不足のまま進めると、相続トラブルや資金繰り悪化、従業員離職などのリスクにつながる可能性があります。
そのため、早期(一般的には5〜10年前)から計画的に準備を始めることが重要とされています。現状把握、後継者選定、承継計画の策定、実行、承継後フォローまで、段階的に進める視点が欠かせません。
■中小企業の事業承継「3つの選択肢」
1. 親族内承継
経営者の子どもや親族に事業を引き継ぐ方法です。 理念や社風を維持しやすいだけでなく、株式の分散リスクが低く、一定の要件を満たすことで、相続税・贈与税の特例(事業承継税制)の活用が可能な点がメリットです。しかし、社内外の理解も得やすい一方で、ほかの親族との間で遺産分割トラブルが発生するリスクや、後継者に適任者がいない場合などデメリットもあります。 特に自社株評価が高い企業では、税負担を見据えた早期対策が欠かせません。
2. 従業員承継(役員・社員への承継)
社内の役員や信頼できる従業員に承継する方法です。
事業理解が深く、取引先や従業員の安心感を得やすいメリットがあります。一方で、株式取得資金の確保が課題になることもあり、金融支援や補助制度の活用がポイントになります。
3. 第三者承継(M&A)
資本関係のない社外の第三者に会社を譲渡する方法です。
「後継者不在でも事業を残せる」選択肢として近年注目されています。従業員の雇用維持や取引継続につながるケースも多く、廃業回避策として有効です。一方で、従業員や取引先への影響が大きく、希望の条件での売却が難しいデメリットもあります。
近年は中小企業向けM&A支援も広がっており、以前より現実的な選択肢になっています。
■活用したい税制
事業承継では、税負担対策も重要です。
代表的なのが「事業承継税制」で、非上場株式にかかる相続税・贈与税について納税が猶予され、一定の継続要件を満たした場合には最終的に免除される仕組みです。
法人の株式を対象とする制度と、個人事業の資産を対象とする制度があり、活用できれば大きな税負担軽減につながる可能性があります。
ただし、適用には認定や継続要件があり、制度設計は複雑です。
活用可否については専門家と検討することが重要です。
■補助金の活用
事業承継は、専門家費用や設備投資などコストも発生します。
そこで活用したいのが「事業承継・M&A補助金(事業承継・引継ぎ補助金)」です。
公募回によって異なるものの、補助率は概ね1/3〜2/3、上限は最大数千万円規模となる場合があります。
公募時期により内容は変更されますが、近年は以下のような枠組みで実施されています。
| 種類 | 対象 | 補助上限 |
|---|---|---|
| 事業継承促進枠 | 事業承継を契機に設備投資等を 行う際の費用 | 800万円~1,000万円 |
| 専門家活用枠 | M&A時に専門家を活用する際の費用 | 600万円~2,000万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 廃業に伴い新たな挑戦を 行う際の費用 | 300万円 |
| PMI推進枠 | 事業統合時に専門家活用や設備投資を行う際の費用 | 150万円~1,000万円 |
※申請の種類によって補助額や上限額が異なります。
出典:中小企業庁 事業承継・M&A補助金(14次公募)
■事業承継は「税務」だけでなく総合設計が重要
事業承継は、税金対策だけで完結するものではありません。
・株価対策
・後継者対策
・資金計画
・補助金活用
・M&A戦略
・相続対策
これらを総合的に設計して初めて、円滑な承継につながります。
特に「まだ先の話」と思っている段階こそ、実は準備開始のベストタイミングです。
■まとめ
事業承継には3つの選択肢があり、どの方法が最適かは、会社の状況や後継者の有無、財務内容によって異なり、正解は一つではありません。
また、事業承継税制や補助金を活用できれば、税負担や承継コストを抑えながら進められる可能性もあります。
ただし、事業承継は税務だけでなく、株価対策、相続対策、資金計画、後継者支援など、総合的な視点で進めることが重要です。さらに、技術や信頼関係といった「見えない資産」を引き継ぐことが、企業の持続的成長につながります。
事業承継は“終わり”ではなく、“新たなスタート”です。将来を見据えた準備こそが、企業の未来を左右するといえるでしょう。